ケーススタディ
業種:木材加工(製材所)
製品:5 MP Tritonカメラ
SDK:カスタムソフトウェア
Tritonマシンビジョンカメラによる木材表面検査の自動化
木材検査は、その材質や等級が一つひとつ異なるため、非常に難易度の高い工程です。高品質な検査は、パネル材や板材の製造工程で発生する節、割れ、亀裂などの欠陥を見つけるために不可欠であり、返品や廃棄による損失の防止にも直結します。自動グレーディング装置は、木材の実際の欠陥を捉えることができますが、刃物のズレなどによるマーキングなど、製造上の不具合を見逃す可能性があります。また、木材の表面仕上げに関する欠陥は、適切な照明がなければ発見が困難です。
こうした課題に対応するには、人間の検査員の作業を補助・強化するためのビジョンシステムが必要です。適切な照明条件下で木材表面を撮影し、静止画として提示することで、検査員は拡大画像を確認しながら、問題を即座に特定し、同様の不具合が他の材にも発生しないよう予防することができます。

高品質の検査工程は、コストのかかる返品や無駄を省き、製造工程で発生する可能性のある節、割れ、ひび割れなどの木材の欠陥を検出するために必要である。

課題
米国ニューハンプシャー州にある Durgin and Crowell Lumber Company は、キルンドライ処理を施した東部ホワイトパインを用いた内装パネル材および外装サイディングの製造を専門としています。木材が出荷される前の検査は非常に重要であり、壁や天井、床に設置された際に目立つスジやくぼみを消費者が嫌うためです。
同社では、創業当初から人手による目視検査を採用していましたが、労働市場の逼迫や生産性向上の課題に対応するため、品質管理体制を強化すべく、遠隔検査による自動ビジョン支援システムの導入を決定しました。自動グレーディング装置は材の等級を効率的に分類できますが、製造上の欠陥を見逃す可能性があるため、モルダー処理後の欠陥を捉える専用検査システムを新たに導入しました。
解決策
Bodkin Design & Engineering は、画像処理に特化した企業であり、Durgin社向けに製造起因の微細な欠陥を検出する高速マシンビジョンシステム「Surface Finish Inspector」を開発しました。このビジョンシステムにより、品質管理担当者は制御室や工場内、さらには遠隔地からでもPCモニターを通じて板材を確認することが可能になります。Surface Finish Inspector は、2×1.5×6フィートの筐体に収められ、外光の影響を排除した状態で、コンベアを通過する板材の表面を撮影します。
このビジョンシステムには、5MPのSony Pregius IMX264センサーを搭載したLUCIDのTritonカメラが使用されています。Bodkinのエンジニアは、板の移動速度と視野に応じてフレームレートを設定し、撮像された画像が隙間なく連結されるように調整しています。また、工場が要求する最小検出欠陥に基づいて、ピクセル視野(Pixel FOV)やブラー(ぼかし)スポットの設定も行っています。

Surface Finish Inspector により、品質管理スタッフは制御室や遠隔地からでもコンピュータモニターで板の状態を確認できます。
Durgin and Crowell Lumber Companyでは、2本の搬送ラインにそれぞれ1台ずつ、計2台の密閉型マシンビジョンシステムを設置しています。これらはモルダー直後の工程に配置されており、スタッフはリアルタイムで画像を確認し、問題があれば即座に生産ラインを停止できるように最大限の判断時間を確保できます。なお、モルダーは自動グレーディングマシンよりも上流の工程に設置されています。

Surface Finish Inspector には、5MPのSony Pregius IMX264センサーを搭載した LUCID の Triton カメラが使用されています。

システムを筐体に収めることで、外部の環境光が撮像プロセスに干渉しないように設計されています。
作業員が板を詳細に確認できるよう、Bodkin社は構造化照明システムを導入しました。このマシンビジョンシステムは欠陥を強調するだけでなく、毎分842フィートで移動する板をフリーズフレーム化して静止画像として表示することが可能です。Bodkinチームは、フレームレート21 fps、撮像距離750 mm、焦点距離16 mmという仕様のシステムを設計しました。撮像エリアは16インチで、最大12インチ幅の木材ボードに対応しています。
2つの画像処理ラインは、1台のプロセッサで統合的に制御されており、選定されたPCのデータレートや保存要件に合わせて運用されています。社内開発された画像処理ソフトウェアは、撮影されたすべての画像を連続的に連結し、移動する板の長尺画像として表示可能にしています。両ラインの画像は1台のPCで処理されており、製材所のスタッフはSurface Finish Inspectorにリモートアクセスして、必要に応じてカメラ設定を変更したり、システムの微調整や改善を行うことが可能です。
結論
本システムにより、従来の目視検査で70~80%程度だった検出率が、最大98%の精度で欠陥を検出できるようになり、生産性の向上と人件費・廃棄ロスの削減に大きく貢献しています。