ケーススタディ
業界:農業
製品:Helios2+ 3Dカメラ
用途:自動乳房洗浄
SDK:Cognex Designer & Deep Learning Studio、Arena SDK
3Dビジョンとロボティクスによる酪農場の衛生自動化
酪農現場では、搾乳前の乳房や乳頭の洗浄など、労働集約的な作業の自動化が日々の課題となっています。衛生管理の一貫性は法的要件であると同時に、家畜の健康と牛乳の品質に直結します。手作業による洗浄はばらつきが多く、既存の機械式洗浄装置も安定した結果を得るのが難しい状況でした。
この課題に対し、英国のマシンビジョンシステムインテグレーターであるFisher Smithは、各牛を自動で洗浄するロボットシステムを開発しました。回転式の搾乳カルーセル上で、システムが乳房位置を検出し、洗浄を行い、その後搾乳ユニットを自動で装着します。
課題
商用牧場で安全かつ確実に牛を洗浄できるシステムを設計するには、多くの課題を克服する必要がありました。厩舎はほこりや湿気、有機物など過酷で変動の多い環境のため、堅牢なカメラ筐体と自動レンズクリーニング機構が求められました。
さらに、ロボットアームが生体に接触するため、高精度な位置制御が不可欠でした。ロボットとカメラの厳密なキャリブレーションと基準合わせにより、再現性と安全性を確保しています。
画像処理も高い要求を伴いました。カルーセルやロボットの動作に追従するため、X・Y・Zおよび輝度データを含む複雑な3D情報を高速で処理する必要があります。乳頭を尾や背景など他の部位から確実に識別するために、専用のディープラーニングパイプラインが構築されました。これにより、従来の手動または機械式洗浄では達成できなかった一貫した衛生品質が実現しました。

ソリューション
LUCIDのHelios2+ Time-of-Flight(ToF)カメラは、英国の販売パートナーClearView Imagingを通じて提供され、本プロジェクトの中核を担いました。IP67保護構造に加え、高ダイナミックレンジ(HDR)と高速動作モードを備え、牧場の厳しい環境に最適です。Helios2+は牛の腹部の高精度な3D深度画像を生成し、Cognex DesignerおよびDeep Learning Studio上で学習モデルを構築して乳頭位置を高精度で検出しました。
Fisher Smithは、Cognex DesignerおよびDeep Learningとのスムーズな通信を実現するために独自のDLLを開発しました。ArenaViewソフトウェアを使用してカメラ設定と深度精度を最適化し、Helios2+をGigE Vision経由でPCに接続。処理されたデータは6軸ロボットを制御し、乳頭ごとに正確な位置で洗浄ツールを配置します。これにより、均一で再現性の高い結果が得られます。
このシステムはリアルタイム3Dデータに基づく高精度制御を実現し、衛生基準を満たしつつ人手を大幅に削減しました。ディープラーニングモデルは他牧場への展開にも対応でき、最小限の再学習で導入可能です。Helios2+の採用により、不安定だった洗浄工程が高精度かつスケーラブルな自動化プロセスへと進化しました。

このソリューションの特長は、スピードや精度だけでなく、一貫した品質にあります。人間の作業者と異なり、AIは常に同じ基準で判定を行い、環境やシフトによるばらつきを排除します。また、新しいデータに即応してモデルを更新し、再プログラミングなしで改善が可能です。PLCとの連携も容易で、将来的にはMESやERPシステムとの接続にも対応します。
汎用ハードウェアとモジュラーソフトウェアを採用することで、コスト効率とスケーラビリティを両立。オペレーターによる専門的な設定は不要で、他のラインや施設にも容易に展開できます。
まとめ
ロボティクス、AI、3Dビジョンを組み合わせることで、酪農機器メーカーは長年の課題であった乳房洗浄の自動化を実現しました。Helios2+は、高精度・高信頼性の動作を支え、衛生基準の遵守と作業効率の向上を両立します。
この技術は、労働負荷の軽減、生産性向上、家畜福祉の改善に寄与し、複数の牧場への展開も可能です。LUCIDの産業用3Dビジョン技術とFisher Smithの専門知識が融合することで、酪農分野における精密ロボティクスとAI導入の新たな可能性が広がりました。

IP67対応のHelios2+ ToFカメラは、商用牧場における精密かつ安全な自動洗浄を実現します。
詳細はこちら:
Fisher Smith(マシンビジョンシステムインテグレーター)
ClearView Imaging(LUCID英国販売パートナー)
Helios2+ ToFカメラ 製品ページ